ホームページ タイトル 本文へジャンプ
症状と原因


どの部分が痛むか?

 腱鞘炎は腱鞘の存在する部分にしか生じない、と書きましたが、具体的には手首の親指側の部分と掌(てのひら)側の指の付け根の部分が痛む場合がほとんどです(右図矢印)。筋肉痛は肘と手首の間の腕の部分(前腕)の指を伸ばす筋肉(伸筋)と指を曲げる筋肉(屈筋)が痛むことが多く、この場合筋肉を触れてみると固くこわばっている状態がしばしば見受けられます。筋肉痛は親指の付け根の膨らんだ部分(母指球筋)にも多く見られます。

 筋肉が骨に付着している部分の痛み(付着部炎)は肘に多く見られ、和音の連打などで付着部にストレスが加わる際に生じます。
イメージ

原因のテクニックは何か?

 音楽家の手の痛みのほとんどが筋肉と腱の痛みなのですから、原因となるテクニックは「強く打鍵すること」「大きな音を出すこと」と考えるのが普通でしょう。

 私も当初はそう考えていたのですが、訪れる患者さんの話を聞いているうちに、必ずしもそうではないことに気づきました。

 右の表は、手を痛めたピアニストに「どんなテクニックの練習で痛めたか?」という質問をして、答えていただいた結果をまとめたものです。驚いたことに、「フォルティッシモで打鍵したから」と答えたのは8%しかなく、全体の割以上がオクターヴや和音の練習と答えていたのです。この2つのテクニックに共通するのは、親指と小指を広げた状態で打鍵することです。したがって、例えばオクターヴの連打を練習する等という場合は「手を痛めることが多いのだ」と心に念じて、初めから無理をせず、小刻みに休みながら練習するなど、手をいたわりながら練習することが大切です。

 また手が小さくてオクターヴが苦手な人は、普段ピアノを離れた時でも親指と小指を広げるストレッチをするといいでしょう。

  

 障害の原因となったテクニック

 

 オクターヴ     43%

 和音        32

 フォルティッシモ   8

 音階         4

 幅広いパッセージ   3

 アルペジオ      3

 その他        7